私たちのアトリエ

　私のフィールドワークは、“イーハトーブ”岩手県である。その中心地花巻は、宮沢賢治(1896−1933)の生誕の地で、賢治の生家・羅須地人協会・賢治碑･朝日橋･イギリス海岸・南斜花壇・賢治記念館等、多くのゆかりの場所がある。花巻市の東部に北から南に北上川が流れ、北上川の河川敷の小舟渡地区に“イギリス海岸”がある。2006(平成18)年7月28日付で宮沢賢治が描いた“イーハトーブの風景地”として、文部科学省から名勝地の認定を受けた。 大正年代に花巻から遠野に向かう軽便鉄道が市内からイギリス海岸に沿うように走り、北上川にかかると軽便鉄道は、北上川の橋梁を渡り、やがて天空の銀河へ・・・“銀河鉄道の夜”の始まりがここにある。かつて軽便鉄道が走っていた軌道は市道となり、ジョバンニとカンパネルラが下車してプレオシン海岸に向かう“白鳥の停車場”は“イギリス海岸の停車場”となった。私たちのアトリエは、“イギリス海岸の停車場”を降りるとそこにある。

地域性を求めて

　賢治は、花巻農学校の教論時代生徒を、よくイギリス海岸に連れてきた。1921(大正10)年から1926(大正15)年（賢治25歳―30歳）の4年4ヶ月である。途中には、萩野時計店・軽便鉄道本社・西洋館菊池邸等が建てられ賢治はその様子を、憧れを持って観察したと思われる。賢治の寓話“黒ぶどう”はまさに“花巻・西洋館菊池邸”を紹介するための寓話である。 “花巻・西洋館菊池邸”は菊池捍(まもる)(1870−1944)氏が1925(大正14)年に建設した。菊池捍は同郷の新渡戸稲造から英語を学び、札幌農学校で7歳から26歳の10年間、学生・研究生・助教授として活躍した。1897(明治30)年28歳のとき、札幌農学校で花巻出身の北大の初代総長・佐藤昌介の妹・淑子を妻に迎え、1913(大正2)年、44歳のとき、明治製糖に入社し新渡戸稲造と後藤新平がいる台湾で活躍する。1925(大正13)年、55歳で帰国し、明治製糖十勝清水工場長となり、1925(大正14)年、国際人として活躍した菊池捍は、実家の花巻・御田屋小路に真の大正リベラル溢れる“花巻・西洋館菊池邸”を建立する。賢治は、農業技術者として成功した桿と男爵になった佐藤昌介に憧れるのである。 “花巻・西洋館菊池邸”を通して当時の花巻を見ると“東北の宝塚”を目指して計画された花巻温泉(日本で初めてのナイター付スキー場・ゴルフ場)・釜石までの開通を目指した軽便鉄道・花巻温泉と鉛温泉までの電車の開通と時代の先端をゆく産業が活発であった。賢治はこんな花巻にイーハトーブを見いだしたのである。


1950年岩手県花巻に生まれる。（株）久慈一戸建築事務所を経て1989年（株）久慈一戸建築事務所花巻設立。2001年、（株）久慈設計花巻に社名変更。2008年1月、（株）木村設計Ａ・Ｔに社名変更、現在に至る。

イギリス海岸の停留所 イギリス海岸の停留所。左側は小舟渡八幡宮、右側は私たちのアトリエ�衞畋疾澤廝繊Γ圈Ａ位牝始�は旧軽便鉄道軌道線跡。

アトリエ 私たちのアトリエの前面道路から徒歩５分で"イギリス海岸"に行くことができる。

イギリス海岸ギャラリー アトリエ玄関脇にある”イギリス海岸ギャラリー”。観光客が訪れることもある。現在は地域活動の情報を発信している。