花巻文化村
版画家、井堂雅夫(1945〜)が、宮沢賢治の｢農民芸術概論綱要｣の思想の実践と精神を伝える場と芸術の創作活動を通じ、地域の人々の文化意識の向上を支援する目的で1994(平成6年)花巻にアトリエを設けた。アトリエは花巻の茅葺屋根だった｢直屋｣を借り受け改造し、さらに多目的ホールを増築した。1999(平成11)年井堂氏と共に岩手県第1号のＮＰＯ花巻文化村協議会を立ち上げた。
花巻新渡戸記念館
藩政時代の花巻は、南部藩の重要な出城として整備された。南部氏は1600年代に豊臣秀吉により滅亡させられた、稗貫和賀氏、葛西氏、江刺氏など旧豪族の主だった家臣を花巻城に集め、伊達藩に備えた。「願わくはわれ太平洋の橋とならん」の信念で有名な新渡戸稲造。彼の先祖もまた旧豪族の家臣である。新渡戸家をはじめ南部氏から見ると外様の家臣は、南部氏本流からの抑圧と、伊達藩よりの攻勢に耐え、稲造の｢武士道｣のもととなった｢花巻魂｣を成熟させるのである。のちの初代北大総長、佐藤昌介も花巻の友人に宛てた漢詩に｢花巻魂｣について述べている。そのような花巻の基盤を創り、盛岡と肩を並べるほどに発展をする石杖となった稲造の先祖は1598（慶長3）年から約220年間、花巻の地に居住し花巻城士の文武両道にわたる指導、新田開発に努めてきた。このような花巻の土壌がのちの宮沢賢治を輩出するのである。旧南部領の十和田市の生みの親といわれる新渡戸傳は1793（寛政5）年に花巻で生まれ、十和田三本木平の開発に尽力した。1989(平成元)年、花巻新渡戸記念館はこれら新渡戸家の功績とゆかりの品を展示した記念館である。
花巻市博物館
2004(平成16)年4月に花巻市博物館がオープンした。2000(平成12)年、コンペで佐藤総合計画東北支社と弊社のＪＶで設計監理を担当することとなった。花巻博物館は、人文系博物館で石器時代から近代、つまり宮沢賢治までの花巻の歴史をテーマとしている。私は、すでに花巻新渡戸記念館で、その基礎を経験していたので、花巻博物館は、通史より企画展示に力を入れ、岩手県内1位の企画展示面積を有する展示館を目指した。
太陽と風の家
一関市東山に晩年の宮沢賢治(この時期の賢治は｢雨ニモマケズ･･･｣とか｢グスコーブドリの伝記｣を発表し、文学者として確立する）が勤務(1931〜1932)した“旧東北砕石工場”を産業近代化遺産として文化財登録して活用し、さらに“石と賢治のミュージアム”太陽と風の家を1999(平成11)年4月にオープンした。
一関東山地域交流センター
2010(平成22)年、開館に向けて現在、宮沢賢治“銀河ステーション”のイメージで約2800�屬梁震榲�ホール･図書館・公民館の機能を有する木造2階建、1部鉄筋コンクリートの東山地域交流センターの設計監理をおこなっている。宮沢賢治の精神で、出来るだけ地産地消を目指し、旧東山町有林の赤松･杉を役場で現物支給をおこなう。 以上のように、宮沢賢治の生誕地、花巻に生まれ、その気候風土で育ちそこで50数年暮らしております。また昨年、6年間の大手設計事務所の勤務を終えて戻った長男と共に地域文化に拘り、宮沢賢治が描いた“イーハトーブの実現を目指して”設計活動を出来ることは、大変幸せなことと感じております。また、昨年は、隣りの地区に住まいする娘さんと長男が婚姻するに当たり、 “イギリス海岸”まで約2km上流から、和船に乗って白無垢姿の“舟の嫁入り”を地域の皆さんと共に出来たことがすばらしかったと思っております。
花巻文化村。版画家、井堂雅夫氏が農家を借り、文化活動への拠点とした。
花巻の城下町の基礎づくりに貢献した、新渡戸家の記念館。
花巻市博物館。
太陽と風の家。子供達のための“石と賢治のミュージアム”。
一関市東山地域交流センター。木造２階建400人収容の多目的ホールは“銀河ステーション”のイメージ。